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浦和家庭裁判所 昭和43年(少)521号 決定 1968年4月16日

少年 I・O(昭二三・四・五生)

主文

この事件については審判を開始しない。

理由

本件は、先に当裁判所が少年法第二〇条により浦和地方検察庁検察官に送致した右少年にかかる窃盗、同未遂保護事件中、窃盗未遂として送致した別紙記載第一の(一)、(二)の犯罪事実について、検察官から「窃盗の着手行為についての証拠がなく公判請求できない。右事実は別紙記載第二の(一)、(二)のとおり住居侵入罪と認められるので審理のうえ再送致されたい。その余の被疑事実については公判請求をするものである。」との理由で再送致されたものである。

しかしながら家庭裁判所から事件の送致を受けた検察官は、犯罪の嫌疑がある以上、その認定事実が家庭裁判所の認定したところと異つても、その間に同一性が存するときは自己の認定に基いて起訴すべきものであり、認定が異なる結果その他の理由により少年の訴追を相当でないとするときのほかは、再び家庭裁判所の判断を経る必要はないものと解すべきところ、別紙第一の(一)の事実と同第二の(一)の事実、また同第一の(二)の事実と同第二の(二)の事実との間にはそれぞれ同一性が存するものと認むべく、そうして検察官が既に他の被疑事実について少年の訴追を相当として起訴する以上、本件は審判条件を欠くものというべきである。従つて主文のとおり決定する。

(裁判官 小島寿美江)

別紙

第一 少年は遊興費に充てるため窃盗をしようと考え

(一) 昭和四三年一月五日午前一一時頃埼玉県加須市大字○○××××の○番地農業塚○弘(二九歳)方の不在中のスキを窺い同人方裏手出入口の雨戸を開けようとして侵入しようとしたところ、通行人に発見されそうになつたのでそのまま逃走し金円窃取の目的を遂げなかつたものである。

(二) 同日午后一時頃北葛飾郡○○町大字○○×××番農業○橋忠○衛(六七歳)の管理する、同町三一番地旧鷲宮町農業協同組合事務所に起居する○辺○一外一名の外出中であることを奇貨とし、表出入口の雨戸を開けて侵入して屋内において金品を物色したが発見出来ずその目的を遂げなかつたものである。

第二 少年は

(一) 昭和四三年一月五日頃、加須市大字○○××××の○番地塚○弘方において、窃盗の目的をもつて同家敷地内に侵入し

(二) 前同日、北葛飾郡○○町大字○○××番地旧○○町農業協同組合事務所において、窃盗の目的をもつて表出入口から屋内に侵入し

たものである。

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